鏡を見るたび、少し後退したように見える生え際。まだ誰かに指摘されるほどではないが、確実に変化は始まっている。父も祖父も髪が薄かったから、いつかは自分も、という漠然とした恐怖がずっと心の片隅にあった。そんな時、インターネットで「AGA遺伝子検査キット」の存在を知った。正直、最初は半信半疑だった。遺伝子を調べるだけで、本当に将来の薄毛のリスクがわかるのだろうか。しかし、知らないまま不安を抱え続けるよりは、科学的な根拠に基づいた自分の状態を知る方が、精神衛生上良いのではないか。そう思い、私は一つのキットを注文することにした。数日後、自宅に届いたのはシンプルな小箱だった。中には説明書と、唾液を採取するための容器が入っているだけ。想像していたよりもずっと簡単で、誰にも知られることなく検査を進められる手軽さに少し安堵した。唾液を入れてポストに投函してから結果が届くまでの二週間は、期待と不安が入り混じった落ち着かない日々だった。そして、ついにメールで結果通知が届いた。恐る恐るファイルを開くと、そこには私のAGAリスクが具体的な数値で示されていた。結果は「高リスク」。一瞬、目の前が暗くなったが、レポートを読み進めるうちに、それは絶望ではなく、むしろ一つの指針なのだと気づかされた。同時に、治療薬であるフィナステリドの効果予測も記されており、私には効果が出やすいタイプであることもわかった。この結果が、私の背中を押してくれた。漠然とした不安が、向き合うべき具体的な課題に変わったのだ。すぐに専門クリニックを予約し、検査結果を持参して医師に相談した。私の不安な気持ちと客観的なデータを前に、医師は親身に今後の対策を提案してくれた。検査をしていなければ、私はまだ一人で悩み続けていただろう。あの小さな箱は、私の未来を変えるための、最初の扉を開けてくれたのだ。
AGA遺伝子検査キットを僕が試した本当の理由とその後