「AGA治療は、なぜやめられないのか?」「いつまで薬を飲み続けなければならないのか?」これは、治療を始めた多くの方が抱く、素朴かつ切実な疑問です。この疑問に答えるためには、AGAという疾患の本質と、治療薬の役割を正しく理解する必要があります。結論から言うと、現在の医学ではAGAを「完治」させることはできません。だからこそ、治療の「継続」が不可欠となるのです。AGA(男性型脱毛症)の主な原因は、「遺伝的な体質」と「男性ホルモンの働き」という、私たち自身が生まれ持った要素にあります。具体的には、男性ホルモン(テストステロン)が、5αリダクターゼという酵素によって、髪の成長を阻害するDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換され、このDHTに対する感受性が高い体質であること。これがAGAの根本原因です。フィナステリドやデュタステリドといったAGA治療薬は、このDHTの生成を抑えることで、薄毛の進行を防いでいます。これを、他の慢性疾患に例えると分かりやすいでしょう。例えば、高血圧の方が服用する降圧剤は、血圧を正常な範囲にコントロールするための薬ですが、高血圧という体質そのものを治す薬ではありません。服用をやめれば、血圧はまた元の高い状態に戻ってしまいます。AGA治療薬もこれと全く同じです。薬を飲んでいる間は、AGAの進行という症状を抑え込むことができますが、薬をやめれば、あなたの遺伝的体質やホルモンの働きは変わらないため、再びAGAは進行し始めます。つまり、AGA治療は、病気の「原因」そのものを取り除く根治療法ではなく、症状をコントロールし続ける「対症療法」なのです。この事実を理解することは、治療へのモチベーションを維持する上で非常に重要です。ゴールが見えない戦いのように感じるかもしれませんが、正しく治療を継続すれば、薄毛の進行という悩みから解放された生活を送ることができる。その価値をどう捉えるかが、AGA治療と長く付き合っていくための鍵となります。
なぜAGA治療は継続が必要?「完治」しない理由を解説