「親父も爺さんもハゲてたから、俺が何をしても無駄なんだ」。AGA治療を始めても効果が出ないと、その原因を「遺伝」のせいにして、諦めてしまう人がいます。確かに、AGAの発症には遺伝的要因が大きく関わっていることは事実です。男性ホルモンの影響の受けやすさ(アンドロゲン受容体の感受性)は、母方の家系から遺伝することが分かっており、遺伝的素因を持つ人がAGAになりやすいのは間違いありません。しかし、「遺伝だから治療しても効果がない」という考え方は、完全な誤りです。むしろ、話は逆です。AGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、まさにこの「遺伝的要因」によって引き起こされるAGAのメカニズム(DHTの生成)を直接ブロックするために開発された薬なのです。遺伝によってDHTの影響を受けやすい体質だからこそ、その生成を薬の力で抑えることが、有効な対策となるわけです。遺伝は、あくまで「AGAになりやすいかどうか」という発症リスクに関わるものであり、「薬が効くか効かないか」を決定づけるものではありません。では、なぜ「遺伝だから効果がない」と感じてしまうのでしょうか。それは、遺伝的素因が強い人ほど、AGAの発症年齢が早く、進行スピードも速い傾向にあるためです。若い頃から急速に薄毛が進行した結果、治療開始のタイミングが遅れてしまい、すでに毛母細胞の活動がかなり低下してしまった状態で治療を始めることになるケースが多いのです。そうなると、当然ながら治療効果も現れにくく、「やっぱり遺伝には勝てない」という結論に至ってしまうわけです。しかし、これも治療開始のタイミングの問題であり、遺伝そのものが薬の効果を妨げているわけではありません。遺伝的リスクを自覚している人こそ、他の人よりも早くから自身の頭皮状態に注意を払い、少しでも変化を感じたら、誰よりも早く専門医に相談し、治療を開始すべきなのです。遺伝を言い訳に諦めるのではなく、リスクを自覚しているからこその「先手必勝」の戦略を取ること。それが、遺伝という宿命に抗うための、最も賢明な道です。
AGA治療が効果ないのは遺伝のせい?諦めるのはまだ早い