近年、自宅で手軽に試せるAGA遺伝子検査キットが注目を集めていますが、一体それで何がわかり、どのように活用できるのでしょうか。この検査の目的は、大きく分けて二つあります。一つは「AGAの発症リスクの判定」、そしてもう一つが「特定の治療薬に対する効果の予測」です。まず、AGAの発症リスクについてです。AGAは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が、毛乳頭細胞にあるアンドロゲンレセプター(AR)と結合することで引き起こされます。このアンドロゲンレセプターの感受性、つまりDHTとどれくらい結びつきやすいかは、AR遺伝子によって生まれつき決まっています。遺伝子検査では、このAR遺伝子の特定の塩基配列(CAGリピート数など)を調べることで、感受性の高低を判定し、将来的なAGAの発症リスクを評価するのです。リスクが高いと判定された場合でも、必ずしも薄毛になるわけではありませんが、遺伝的な素因を持っているという客観的な事実を知ることができます。次に、治療薬の効果予測です。AGA治療に広く用いられるフィナステリドという内服薬は、DHTの生成を抑制する効果がありますが、その効果の現れ方にも遺伝的な個人差があることがわかっています。遺伝子検査キットの中には、このフィナステリドの効果に関連する遺伝子タイプを調べる項目が含まれているものもあります。これにより、治療を開始する前に、その薬が自分に効きやすいタイプかどうかをある程度予測できるのです。ただし、最も重要なのは、これらの検査結果はあくまで統計に基づいたリスク評価であり、確定診断ではないという点です。生活習慣やストレスなど後天的な要因も複雑に絡み合うため、結果は一つの参考情報として捉え、最終的な判断は専門の医師に相談することが不可欠です。
AGA遺伝子検査キットでわかることの全てを専門家が解説