AGA治療を始めてから、早いもので二年が経った。鏡の中の自分は、二年前とは見違えるようだ。あれほど悩んでいた頭頂部の透け感はなくなり、風が吹いても、雨に濡れても、以前のように慌てることはなくなった。治療の効果には、心から満足している。友人にも「本当に変わったね」と驚かれるし、自信がついて、仕事にも前向きになれた。ここまでは、紛れもなく成功体験だ。しかし、二年という月日が経ったからこそ、新たな悩みが静かに頭をもたげてきた。「この治療は、一体いつまで続ければいいのだろうか」。毎日欠かさず薬を飲む生活。それはもう習慣になったが、ふとした瞬間に、この先の人生ずっとこれを続けるのか、と考えると、少しだけ気が重くなる。もし、飲むのをやめたら?せっかく手に入れたこの状態が、また失われてしまうのだろうか。その恐怖が、私を薬に縛り付けているような感覚に陥ることがある。治療費も、決して安くはない。二年間の総額を計算すると、それなりの金額になる。この投資を、あと何十年続けるのだろう。考え始めると、キリがない。これは、治療がうまくいっているからこその、贅沢な悩みなのかもしれない。でも、同じように長期で治療を続けている人は、きっと一度は同じことを考えるのではないだろうか。明確な「終わり」がない治療だからこそ、自分の中でどう折り合いをつけていくか。それが、AGA治療二年目の私に突きつけられた、新しい課題なのだ。