AGA治療の代表的な薬である「フィナステリド」と「ミノキシジル」。これらは、それぞれ異なるアプローチで薄毛に立ち向かうため、服用や使用をやめた場合に起こる変化にも違いが現れます。この違いを理解することは、治療継続の重要性をより深く認識するために役立ちます。まず、フィナステリド(やデュタステリド)は、AGAの進行を食い止める「守りの薬」です。AGAの原因物質であるDHTの生成を抑制することで、ヘアサイクルの乱れを防ぎ、抜け毛を減らします。この薬の服用をやめると、体内でDHTの生成が再開され、再び毛根への攻撃が始まります。つまり、AGAの「根本原因」が復活するため、治療によって得られた効果は、比較的着実に失われていきます。ヘアサイクルが再び乱れ始め、髪は細く、弱々しくなり、抜け毛が増え、数ヶ月から半年かけて治療前の状態へと戻っていくのです。いわば、ダムの放流を止めていた栓を抜くようなもので、時間の経過と共に、確実に水位(薄毛の進行度)が元に戻っていきます。一方、ミノキシジルは、頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促す「攻めの薬」です。この薬の使用をやめると、血行促進効果や細胞活性化作用が失われます。これにより、毛根に届けられる栄養が減少し、髪の成長が鈍化します。ミノキシジルの効果によって太く長く成長していた髪は、徐々に勢いを失い、やがては本来の(AGAの影響を受けた)細い髪へと戻っていきます。フィナステリドと違い、直接的にAGAの原因を抑えているわけではないため、やめた直後のリバウンドは比較的緩やかに感じるかもしれません。しかし、守りの要であるフィナステリドを併用していなければ、結局はAGAの進行によって、治療効果は失われてしまいます。守りをやめれば敵の攻撃が始まり、攻めをやめれば味方の補給が途絶える。どちらか一方、あるいは両方をやめてしまえば、戦況が悪化するのは必然なのです。
フィナステリドとミノキシジルをやめた場合の違い