AGA治療の根幹をなす内服薬、フィナステリドとデュタステリド。これらはAGAの根本原因に働きかける非常に有効な薬ですが、治療を検討する多くの男性が最も懸念するデメリットが「性機能への影響」です。男性としての尊厳にも関わるこの問題について、目を背けずに正しく理解しておく必要があります。フィナステリドやデュタステリドは、男性ホルモンであるテストステロンが、AGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されるのを阻害する薬です。このホルモンバランスへの作用が、一部の人に性機能関連の副作用を引き起こす可能性があります。具体的に報告されているのは、「性欲減退(リビドー減退)」「勃起機能不全(ED)」「射精障害(射精量の減少など)」の三つです。これらの副作用は、男性にとって非常に大きな心理的負担となり、治療を躊躇させたり、中断させたりする最大のデメリットと言えるでしょう。パートナーとの関係に影響を及ぼす可能性も否定できません。しかし、ここで重要なのは、その「発現頻度」です。国内外の臨床試験データによれば、これらの副作用が起こる確率は、おおむね1%〜5%程度とされています。つまり、100人服用したうちの数人ということであり、大半の人は副作用を経験することなく、治療の恩恵を受けているのです。また、偽薬(プラセボ)を服用したグループでも一定の割合で同様の症状が報告されており、薬を飲んでいるという不安感からくる心理的な影響(ノセボ効果)も無視できません。万が一、副作用が現れた場合でも、自己判断で服用を中止するのではなく、まずは処方医に相談することが鉄則です。医師の管理のもとで、減薬や休薬、あるいは他の治療法への変更など、適切な対処が可能です。性機能への影響というデメリットは、確かに存在します。しかし、そのリスクを過度に恐れるのではなく、客観的なデータと正しい知識を持ち、信頼できる医師と共に乗り越えていくべき課題なのです。