意を決してAGA治療を開始し、希望に胸を膨らませていた矢先に訪れる、最も過酷な心理的デメリット。それが「初期脱毛」です。治療を始めて数週間から2ヶ月ほどの間に、なんと抜け毛が以前よりも増えてしまうという、にわかには信じがたい現象です。この初期脱毛は、多くの治療経験者が通る道であり、AGA治療における最初の、そして最大の試練と言えるでしょう。せっかく髪を増やしたくて治療を始めたのに、逆に髪が抜けていく。この現実は、患者の心を激しく揺さぶります。「薬が合わないのではないか」「効果がないどころか悪化している」「騙されたのではないか」。そんな疑心暗鬼と絶望感に苛まれ、精神的に大きなダメージを受けることは、計り知れないデメリットです。この精神的なショックから、自己判断で服用を中止してしまい、せっかくの治療機会をフイにしてしまう人が後を絶ちません。しかし、この初期脱毛は、決して治療失敗のサインではないのです。むしろ、薬が正常に作用し始めた証拠、「好転反応」なのです。AGAによって乱れたヘアサイクルが、薬の力で正常なサイクルへとリセットされる過程で、休止期にあった弱々しい古い髪の毛が、新しく生えてくる健康な髪に押し出される形で抜け落ちていきます。いわば、健全な新しい組織を作るための「デトックス」や「スクラップアンドビルド」のようなもの。このメカニズムを、治療開始前に医師から十分に説明を受け、頭で理解していたとしても、実際に目の前の抜け毛が増える様を目の当たりにすると、冷静でいられなくなるものです。この辛い時期を乗り越えるためには、初期脱毛という現象への正しい知識を持つこと、そして、不安になった時にいつでも相談できる、信頼できる医師の存在が不可欠です。この心理的なデメリットを乗り越えた先に、本当の改善が待っていると信じ、治療を継続する強い意志が求められます。