ドライヤーの熱が髪と頭皮を傷つける仕組み
なぜ、ドライヤーの熱が髪と頭皮に悪いと言われるのでしょうか。その理由を科学的な視点から理解することで、正しいヘアケアの重要性が見えてきます。まず、髪の毛についてです。私たちの髪の主成分は、約十八種類のアミノ酸が結合してできたケラチンというタンパク質です。タンパク質は熱に弱い性質を持っており、生卵を熱するとゆで卵になるように、熱を加えると構造が変化してしまう「熱変性」という現象を起こします。髪の毛の場合、一般的に六十度以上の熱を長時間当て続けると、この熱変性が始まると言われています。ドライヤーの吹き出し口付近は、百二十度を超える高温になることも珍しくありません。このような高温の風を至近距離で当て続ければ、髪の内部のタンパク質が固まり、空洞ができてしまいます。その結果、髪は水分を保持する力を失い、乾燥してパサパサになったり、弾力が失われて切れやすくなったりするのです。次に、頭皮への影響です。頭皮も髪と同じく、私たちの体の一部であり、皮膚です。健康な頭皮には、外部の刺激から守るためのバリア機能が備わっており、適度な水分と皮脂によってその機能が保たれています。しかし、ドライヤーの高温の風は、この必要な水分や皮脂まで根こそぎ奪い去ってしまいます。バリア機能が低下した頭皮は、乾燥してかゆみが出たり、わずかな刺激にも過敏に反応して炎症を起こしたりするようになります。また、乾燥を防ごうとして、かえって皮脂が過剰に分泌され、毛穴の詰まりやベタつきの原因となることもあります。このような劣悪な頭皮環境は、健康な髪が育つための土壌としては不適切であり、結果的に薄毛や抜け毛のリスクを高めることにつながるのです。熱の恐ろしさを正しく理解し、優しいケアを心がけることが重要です。