鏡を見るたびに深いため息をついてしまうのが最近の日課になってしまった私ですが生え際の後退に気づいた当初は単なる疲れや季節の変わり目のせいだと自分に言い聞かせて現実から目を逸らし続けていましたが日に日に広がる額の面積と枕元に落ちている抜け毛の量を見るにつけもはや言い逃れのできない状況に追い込まれていることを認めざるを得なくなりました。インターネットで検索窓にAGAや男性ホルモンという言葉を打ち込んでリサーチを重ねる日々が始まりましたがそこで得た知識は私の淡い期待を打ち砕く残酷なものでありどうやら私の頭皮では男性ホルモンが悪さをしているらしいという事実を突きつけられたのです。昔から父親も祖父も薄毛であったため遺伝的な素因があることは覚悟していましたがまさかこれほど早く自分にもその時が訪れるとは思っておらず自分の体内を流れるテストステロンが頭皮という戦場でジヒドロテストステロンという破壊者に姿を変えて私の愛する毛根たちを次々と攻撃している様を想像すると何とも言えないやるせなさと自分の体に対する裏切られたような感情が湧き上がってきます。しかし嘆いてばかりいても失われた髪が戻ってくるわけではなく科学の力を借りてこのホルモン戦争に立ち向かう決意を固めた私は皮膚科の門を叩き医師から処方されたフィナステリドという薬を手にすることになりました。この薬は5αリダクターゼという酵素の働きをブロックしてテストステロンがジヒドロテストステロンに変わるのを防ぐというまさに敵の補給路を断つような戦略的な効果を持つものであり飲み始めてから半年が経過した頃には抜け毛が目に見えて減少し産毛のような頼りない髪が少しずつ太く育ち始めているのを実感できたときの喜びは言葉では言い表せないものでした。もちろん薬には副作用のリスクもありますし一生飲み続けなければならないという負担もありますがそれでも毎朝鏡を見て落ち込むストレスから解放されたことや自分に自信を取り戻せたことの価値は計り知れず男性ホルモンとの付き合い方をコントロールすることで運命は変えられるのだという確信を得ることができました。薄毛は恥ずかしいことでも隠すべきことでもなく遺伝とホルモンのいたずらによる生理現象の一つに過ぎないのであり現代医学の恩恵を受けることでその悩みは解決できる可能性があるということを同じ悩みを抱える同志たちに伝えたい気持ちでいっぱいですしこれからも私は自分の髪を守るためにホルモンとの静かなる戦いを続けていくことになるでしょう。
薄毛の悩みを科学する男の独白