朝の洗面所で何気なく鏡を覗き込んだ瞬間に背筋が凍りつくような感覚に襲われた経験を持つ男性は決して少なくないはずですが私の場合も例外ではなく前髪を上げた時に露わになった額の広さに強烈な違和感を覚えたのが全ての始まりでした。学生時代の写真と見比べてみると明らかに生え際のラインが後退しておりかつてはシャープだったM字の角度が緩やかになりM字の谷底が深くなっているという現実は認めたくないけれど認めざるを得ない残酷な事実として目の前に突きつけられたのです。生え際の後退は頭頂部の薄毛とは異なり自分自身で毎日鏡を見るたびに確認できてしまうため精神的なダメージが非常に大きく風が吹いて前髪が乱れることを極端に恐れたりプールや海に誘われても頑なに拒否したりと日常生活における行動範囲すら狭めてしまうほどの深刻なコンプレックスへと発展しかねない問題を孕んでいます。多くの人が陥りがちなのが「これは生まれつきおでこが広いだけだ」とか「最近仕事が忙しくて疲れているから一時的に抜けているだけだ」といった自分に都合の良い解釈をして現実逃避をしてしまうことですがAGAすなわち男性型脱毛症は進行性の疾患であり一度スイッチが入ってしまえば自然に止まることはなく放置すればするほど確実に生え際は後退を続け最終的には頭頂部の薄毛と繋がってU字型の脱毛へと進行してしまうという恐ろしいシナリオが待っています。特に生え際の毛根は頭頂部に比べて男性ホルモンの影響を受けやすく一度死滅してしまうと復活させるのが極めて難しいという厄介な性質を持っているため「まだ大丈夫だろう」という根拠のない楽観視こそが取り返しのつかない事態を招く最大の敵となるのです。私がAGA専門のクリニックに駆け込んだのは友人に「最近おでこ広くなった?」と何気なく言われた一言が決定打となったからですがマイクロスコープで拡大された自分の生え際の映像を見て衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えています。そこには太く健康な髪に混じって頼りなく細い産毛のような髪が無数に存在しており一つの毛穴から本来なら2本か3本生えているはずの髪が1本しか生えていなかったり毛穴自体が塞がって消滅しかけていたりする惨状が映し出されていたのです。医師の説明によれば生え際の毛乳頭細胞にはⅡ型5αリダクターゼという酵素が多く分布しておりこれがテストステロンと結びついて強力な脱毛因子であるジヒドロテストステロンを生成し毛母細胞の分裂を阻害して成長期を短縮させているとのことでした。つまり私の生え際では目に見えないレベルで激しいホルモン戦争が繰り広げられており毛根たちが次々と敗北して死滅していく過程にあったのです。この事実に直面した時の絶望感は筆舌に尽くしがたいものがありましたが同時に「今ならまだ間に合うかもしれない」という一縷の望みに賭けて治療を開始する決意を固めるきっかけにもなりました。